
長崎でDXを進めたいと思っても、「県と市の計画は自社にどう関係するのか」「どこに相談すればよいのか」「補助金はまだ使えるのか」と迷うことはないでしょうか。検索すると行政の計画、相談窓口、補助金、セミナーが別々に出てくるため、最初の一歩が見えにくくなりがちです。
長崎県は2026~2030年度の「ながさきDX推進プラン」を策定し、長崎市も2030年度までのDX推進計画を進めています。ただし、これらは地域や行政の方向性を示す計画です。企業がDXに取り組むときは、自社の経営課題を決め、使える支援を確かめ、小さく試す順序が大切です。本記事では、県と市の取り組み、2026年10月5日時点の事業者向け支援、現場での進め方を整理します。
| 知りたいこと | まず確認する情報 | 自社で考えること |
|---|---|---|
| 長崎のDXの方向性 | 県の推進プラン、市の推進計画 | 自社の事業課題と接点があるか |
| 始め方の相談 | 市の相談窓口・セミナーなど | 相談したい業務と困りごとを言葉にできるか |
| 費用面の支援 | 県・市の補助金の公式ページ | 所在地、対象経費、募集状況が合うか |
長崎のDXとは?県と市の取り組みを整理
「長崎のDX」と一口に言っても、県の地域づくり、市の行政サービス、個々の企業の業務改善では対象が異なります。混同を避けるには、次の三つを分けて見ると分かりやすくなります。
- 長崎県の「ながさきDX推進プラン」
- 長崎市のDX推進計画
- 企業のDXと自治体のDXのつながり
それぞれの役割を確認したうえで、自社に関係する部分を見つけましょう。
長崎県の「ながさきDX推進プラン」
長崎県の「ながさきDX推進プラン」は、2026年度から2030年度までを推進期間とする計画です。県は、暮らし、仕事、行政などでデジタル技術を使い、課題解決と新しい価値づくりを進める方針を示しています。概要版では、「こども・くらし・まち」「しごと・にぎわい」「行政」の三つを施策の柱にしています。
中小企業の担当者が特に確認したいのは「しごと・にぎわい」の柱です。ここには、事業者への伴走型支援、農林水産・製造・観光などの生産性向上、観光データの活用や県産品の販路づくりといった方向性が盛り込まれています。ただし、計画に書かれた施策がそのまま個々の会社への補助や採択を意味するわけではありません。自社に使える制度は、募集要項を別に確認する必要があります。出典:長崎県「ながさきDX推進プラン」。
長崎市のDX推進計画
長崎市のDX推進計画は、2022年度から2030年度までを計画期間とし、2025年3月の改訂で2025~2027年度の基本施策等を設定しました。市は「人」が主役のまちづくりを掲げ、市民や来訪者の使いやすさを重視しています。概要版では「生活」「産業」「人材」「交流」「行政」の五つの分野について、2030年に目指す姿を示しています。
この計画は、長崎市全体をどう変えていくかを知る資料です。市内企業の担当者には、地域で求められるサービスや人材の方向性を考える手がかりになります。一方、自社が受けられる相談や補助の条件は、後述する事業者向けの案内で確認してください。出典:長崎市「長崎市DX推進計画を改訂しました」。
企業のDXと自治体のDXはどうつながるか
行政が示す方向性を、自社のDXの目的としてそのまま掲げる必要はありません。企業にとって重要なのは、顧客に届ける価値や、事業を続けるうえでの課題がどう変わるかです。たとえば、問い合わせ内容を記録して対応漏れを減らす取り組みは業務のデジタル化です。その記録から顧客の困りごとを読み取り、サービスの提供方法まで変えるなら、事業の変革にもつながります。
県の計画を読むときは「自社の業種に関係する地域課題は何か」、市の計画を読むときは「顧客や働く人の体験はどう変わるか」と問いを置くと、抽象的な方針を具体的な検討材料にできます。支援制度の一覧を眺める前に、まず自社の課題を一つ書き出してみましょう。
長崎の中小企業がDXを始める前に整理したいこと
「DXを進めて」と任されたものの、最初にツールを比較すべきか、補助金を探すべきか迷う担当者もいるでしょう。着手点を見つけるには、次の三つを順に整理します。
- 人手不足や属人化などの経営課題を一つ選ぶ
- 業務の現状と改善指標を記録する
- デジタル化と事業変革の目標を分ける
この準備ができていれば、相談先にも自社の状況を説明しやすくなります。
人手不足や属人化などの経営課題を一つ選ぶ
最初のDXテーマは、使いたい技術ではなく、解決したい課題から決めます。「人手が足りない」だけでは範囲が広すぎるため、「受注内容の転記に時間がかかる」「担当者が不在だと見積もりが止まる」のように、困る場面まで具体化してください。
候補が複数ある場合は、顧客への影響、発生頻度、作業時間の三つで比べると選びやすくなります。毎日発生し、担当者以外が対応できず、顧客を待たせている業務は、最初に調べる価値が高いでしょう。経営者だけで決めず、実際に作業する人にも流れと例外処理を聞くことが重要です。
業務の現状と改善指標を記録する
改善の前に現在の状態を測っておくと、導入後に「便利になった気がする」で終わらずに済みます。たとえば受注業務なら、1件あたりの処理時間、転記回数、差し戻し件数、顧客への回答までの時間を記録します。正確な集計が難しければ、まず数日分を対象にする方法でも構いません。
改善指標は、課題と直接つながるものを一つか二つに絞ります。転記ミスを減らしたいならミス件数と修正時間、属人化を減らしたいなら代替担当者が処理できる件数などです。測定方法と担当者も決めておくと、試した結果を公平に判断できます。
デジタル化と事業変革の目標を分ける
紙の申請書を電子フォームに変える、手入力を減らすといった取り組みは、重要なデジタル化です。ただし、入力後に誰が何を確認し、顧客への返答がどう早くなるかまで考えなければ、作業場所が紙から画面に移るだけのこともあります。
そこで「まず何の作業を楽にするか」と「その結果、顧客や事業にどんな価値を生むか」を別々に書きます。たとえば「問い合わせを一元管理する」は手段、「担当者が変わっても相談履歴を踏まえて早く回答する」は目標です。最初から大きな変革を完成させる必要はありません。小さな業務改善を、事業上の目的につなげて進めましょう。
長崎で相談できるDX支援・セミナー
自社の課題は見えても、社内に専門担当者がいなければ、進め方を一人で決めるのは難しいものです。長崎市内の企業なら、市の相談窓口や学びの場を確認できます。県内のほかの地域にある企業も、県の公式情報を起点に、自社に合う支援を探しましょう。
- 長崎市の無料相談窓口「ビズデジコンシェル」
- 長崎市のDXセミナー・伴走支援者との接点
- 県内の支援情報を探すときの確認先
利用対象や開催日は事業ごとに異なるため、申し込む前に主催者の案内を確認してください。
長崎市の無料相談窓口「ビズデジコンシェル」
「何から始めればよいか分からない」という段階なら、長崎市の無料相談窓口「ビズデジコンシェル」が候補になります。市は、業務課題の見直しやデジタル活用の悩みを受け止める窓口として案内しています。相談前に「困っている業務」「誰が担当しているか」「どのくらい時間がかかるか」をメモしておけば、具体的な話がしやすくなります。
この窓口は長崎市の伴走型DX化支援事業の一部です。対象や連絡方法は長崎市の公式ページを確認してください。市外の企業は、利用できると決めつけず、所在地を伝えたうえで該当する相談先を確認しましょう。
長崎市のDXセミナー・伴走支援者との接点
長崎市は、市内中小企業者向けにDXの必要性を学ぶセミナーや、専門知識を持つ伴走支援者とのマッチング会も案内しています。講義を聞くだけで終わらせないためには、自社の業務課題を一つ持って参加し、「どの範囲から試せるか」「社内にどんな役割が必要か」を質問するとよいでしょう。
2026年10月5日時点の市の案内には、10月14日開催のセミナー情報が掲載されています。開催日、会場、申込状況は変わるため、参加を検討する際は同ページの最新情報を確認してください。
県内の支援情報を探すときの確認先
長崎市以外の企業や、県全域を対象とする制度を探す企業は、まず長崎県の事業者支援ページで現在の案内を確認してください。検索結果には過去年度の補助金や終了済みイベントも残るため、ページの更新日、対象年度、募集期限を一緒に見ることが大切です。
相談先を選ぶ際は、会社の所在地、相談したいテーマ、費用の有無を確認します。「県の計画に書かれているから使える」「昨年開催されたから今年もある」とは判断せず、事業ごとの募集ページに進んでください。
長崎県と長崎市のDX補助金は何が違う?
補助金を探すと「県と市のどちらを使えばよいのか」と迷うかもしれません。2026年度の二つの制度は、対象となる取り組みと募集状況が異なります。
- 長崎県のデジタル力向上支援事業費補助金
- 長崎市の伴走型DX化支援補助金
- 対象地域・経費・募集状況を確認する順序
特に、県の制度は募集期限を過ぎています。以下は2026年10月5日に公式ページを確認した内容であり、申請時には必ず最新の募集要項を見てください。
長崎県のデジタル力向上支援事業費補助金
長崎県の2026年度「デジタル力向上支援事業費補助金」は、県内の中小企業等が取り組むデジタル人材の育成や、IT機器・デジタルツールの導入を支援する制度です。ただし、県の公式案内によると、2026年度の募集期限は9月30日で、さらなる延長は予定されていません。10月5日時点で、これから申請できる制度として紹介することはできません。
制度の内容を知っておくことは、今後の資金計画を立てる際の参考になります。ただし、次年度に同じ制度が募集されるとは限りません。新しい募集の有無や要件は、県の公式案内が出たときに確認してください。
長崎市の伴走型DX化支援補助金
長崎市の2026年度「伴走型DX化支援補助金」は、外部専門家による相談やアドバイスなど、DXの計画策定・組織変革を進めるための伴走支援費を対象にしています。市の公式ページでは、申請受付期間を11月30日までと案内していますが、予算がなくなり次第終了します。
この制度では、DX推進のためのシステムや機器の導入費は対象外と明記されています。県の制度と同じ用途を想定して申請準備を進めないよう注意してください。また、市内に本社があり、同一事業を1年以上営むことなどの要件があります。対象事業、対象経費、必要書類は公式ページで確認し、不明な経費は事前に市へ問い合わせるのが確実です。
対象地域・経費・募集状況を確認する順序
補助金は、名称に「DX」が含まれていても、会社の所在地や使い道が合わなければ申請できません。最初に募集状況、次に対象者、最後に対象経費と他制度との併用条件を確認しましょう。
| 確認項目 | 長崎県の2026年度制度 | 長崎市の2026年度制度 |
|---|---|---|
| 対象地域の基本 | 県内に主たる事業所等を置く事業者 | 長崎市内に本社を置く事業者 |
| 主な支援内容 | デジタル人材育成、IT機器・ツール導入 | 外部専門家による計画策定などの伴走支援 |
| 2026年10月5日時点の募集状況 | 9月30日の期限を経過 | 11月30日までの受付案内。予算到達で終了 |
| 特に注意する点 | 次年度の募集は未定 | システム・機器の導入費は対象外 |
市の制度は、国・県・市などの類似補助制度を同じ対象事業に適用していないことも要件です。補助率や上限額だけを比べて決めず、見積もりを取る前に、募集要項と担当窓口で自社の条件を確かめてください。出典:長崎県、長崎市。
中小企業がDXを進める5ステップ
支援制度が見つかっても、社内の進め方が決まらなければ成果につながりません。少人数の企業でも始めやすいよう、次の順番で進めます。
- 改善する業務を一つに絞る
- 効果と負担から優先順位を決める
- 現場責任者と実行体制を決める
- 小さく試して使い方を整える
- 指標を見て継続・改善を判断する
最初から全社に広げず、判断材料を集めながら進めることが、現場の負担を抑える助けになります。
1. 改善する業務を一つに絞る
まずは「見積書を作る」「予約を受け付ける」など、開始から完了までを説明できる業務を一つ選びます。現状の流れを紙や画面上に並べ、入力、確認、承認、顧客への連絡のうち、どこで待ち時間や手戻りが発生するかを見ます。
「会社全体をDXする」という目標は大きすぎて、担当者の行動に落とし込みにくいものです。一つの業務を対象にすれば、関係者、必要なデータ、改善後の変化を具体的に話し合えます。
2. 効果と負担から優先順位を決める
候補の業務が複数あるなら、期待できる効果だけでなく、変えるための負担も比べます。たとえば、作業時間の削減幅が大きくても、顧客や取引先を含む運用変更が必要なら、初回の実証には時間がかかるでしょう。
| 判断軸 | 確認すること |
|---|---|
| 効果 | 作業時間、ミス、顧客の待ち時間を減らせるか |
| 実行しやすさ | 対象者を絞れるか、既存データを使えるか |
| 負担・リスク | 教育、移行、個人情報の扱いに無理がないか |
最初は効果が見込め、対象範囲を限定できる業務を選ぶと、結果を確かめやすくなります。
3. 現場責任者と実行体制を決める
DX担当者を一人任命するだけでは、日々の運用は変わりません。意思決定をする人、実際に使う人、問い合わせや不具合を受ける人を決めておきます。少人数の会社なら兼任でも構いませんが、「誰が使い方を直すか」は明確にしましょう。
特に、現場の熟練者が持つ例外処理や判断のコツは、導入前に聞き取る必要があります。便利な画面を用意しても、例外が処理できずに紙の運用へ戻ってしまえば、改善効果は出ません。
4. 小さく試して使い方を整える
対象を一つの部署、一つの業務、一定期間に限って試します。試行中は、操作に迷った箇所や、想定外の手作業が残った箇所を記録してください。ツールの機能だけでなく、入力項目、承認手順、利用者への説明も調整します。
顧客情報や従業員情報を扱う場合は、使うサービスの権限設定や保存先も事前に確認します。試行の段階で運用上の問題を見つければ、全社へ広げる前に修正できます。
5. 指標を見て継続・改善を判断する
試行が終わったら、事前に決めた指標を導入前後で比べます。処理時間が短くなっても、差し戻しが増えていれば、入力手順や確認方法を見直す必要があります。数値に加え、使った人の声も集めましょう。
成果が確認できた取り組みは、手順を文書化して対象を広げます。効果が小さい場合は、設定や運用を変えて再度試すか、いったん止めるかを判断します。補助金の有無だけで継続を決めないことが大切です。
長崎市内の企業で進め方に迷う場合は、課題と現状の指標を持って「ビズデジコンシェル」の案内を確認してください。
長崎のDXについてよくある質問
DXの方針や支援制度を調べた後も、ツール導入の位置づけや、支援の対象地域が気になるかもしれません。よくある疑問を三つに分けて答えます。
- DXはITツールを導入するだけで実現できますか?
- 長崎市以外の企業も市の支援を利用できますか?
- 補助金の募集終了後は何から始めればよいですか?
DXはITツールを導入するだけで実現できますか?
ツールを導入しただけでDXが実現するとは限りません。必要なのは、解決する課題を決め、仕事の進め方や顧客への価値をどう変えるかまで考えることです。紙の情報を電子化するだけでも有効な第一歩ですが、同じ内容を別の画面へ何度も入力するなら、業務全体の流れを見直す余地があります。
まずは「どの作業が減り、誰にどんな変化があるか」を言葉にしてください。そのうえでツールを選べば、導入自体を目的にせずに済みます。
長崎市以外の企業も市の支援を利用できますか?
制度ごとに対象が異なります。たとえば2026年度の長崎市伴走型DX化支援補助金は、市内に本社を置くことなどを要件としています。一方、県の制度は県内に主たる事業所等を置く事業者を対象としています。市の相談やセミナーについても、個別の案内で対象者を確認してください。
長崎市外の企業は、所在地を明示して県の担当部署や地元自治体へ相談すると、対象外の制度を前提に準備する手間を避けられます。
補助金の募集終了後は何から始めればよいですか?
募集の終了を、DXを止める理由にする必要はありません。まず対象業務を一つ選び、処理時間やミス件数などの現状を測ります。そのうえで、既存の仕組みを使って改善できる部分と、外部の支援や投資が必要な部分を分けてください。
課題と費用の見通しが整理できれば、次に利用可能な制度が出たときにも、対象経費やスケジュールを判断しやすくなります。新しい募集が始まるかどうかは、県・市の公式ページで確認しましょう。
まとめ
長崎県の「ながさきDX推進プラン」と長崎市のDX推進計画は、地域や行政の目指す方向を知る資料です。企業が利用する相談窓口、セミナー、補助金には、それぞれ別の対象と条件があります。2026年10月5日時点では、県のデジタル力向上支援事業費補助金は募集期限を過ぎ、市の伴走型DX化支援補助金は11月30日までの受付案内があるものの、予算に達すれば終了します。
最初の行動は、補助金の金額を比べることではなく、改善したい業務を一つ書き出すことです。現状を測り、現場の人と小さく試す計画を立てれば、相談先にも具体的な質問ができます。長崎市内の企業は市の相談窓口を、県内の企業は県の支援情報を確認し、自社に合う一歩から始めてください。




