
顧客ごとに資料を調べ、商談の内容を踏まえて提案書を直す。営業では、こうした準備に時間がかかります。「OpenAIのdotsに任せられる仕事はあるのか」「顧客情報を扱わせてもよいのか」と気になっている方もいるでしょう。
dotsは、目標と必要な文脈を伝えると、接続したアプリや自身の作業環境を使って仕事を進めるAIエージェントです。OpenAIの公式発表には、営業責任者が顧客要件と過去の取引情報を製品資料に照らし、提案書を更新する利用例が示されています。ただし、顧客への約束や送信まで無条件に任せるものではありません。
この記事では、営業での具体的な使いどころ、最初の試し方、事前に決めたい確認・承認のルールを整理します。製品情報と提供状況は2026年10月12日時点の公式情報に基づきます。
OpenAIのdotsとは
「ChatGPTと何が違うのか」が分からなければ、営業での使い方も想像しにくいはずです。まず、dotsの特徴を次の三点から押さえましょう。
- 目標と文脈を共有して継続的に作業するAIエージェント
- ChatGPTでの通常の会話との違い
- 営業担当者の判断を残したまま作業を進める仕組み
目標と文脈を共有して継続的に作業するAIエージェント
dotsは、一度きりの質問への回答に加え、進行中の仕事を引き受けることを想定したAIエージェントです。ユーザーが目標や判断基準を伝えると、利用を許可されたアプリや専用のクラウド上の作業環境を使って、複数の作業を進められます。作業の状況を確認し、途中で方向を変えることもできます。こうした仕組みはOpenAIの製品発表で説明されています。
営業なら「来週の商談に向け、顧客から追加された要件を確認し、提案書の修正案と未確認事項をまとめて」といった依頼が考えられます。ただし、必要な資料へアクセスできるか、どの操作が可能かは接続設定や権限によって変わります。「24時間稼働」という表現は、すべての作業が人の確認なしに自動で完了するという意味ではありません。
ChatGPTでの通常の会話との違い
通常のChatGPTの会話は、その場で質問し、回答を得る使い方が中心です。一方dotsは、継続する仕事の目標や背景を持ち、会話と会話の間も進捗を生むことを想定しています。OpenAIのヘルプでも、専用の作業環境、接続したアプリ、継続的な文脈の利用が違いとして挙げられています。
例えば通常の会話なら「この商談メモを要約して」と依頼します。dotsには「新しい要件が出たら既存の提案内容への影響を整理し、次回商談前に確認すべき点を提示して」と、継続する役割を渡せます。後者も、参照先への権限や作業範囲を設定したうえで利用します。
営業担当者の判断を残したまま作業を進める仕組み
営業では、資料を集めることと、顧客へ何を約束するかを決めることは別の仕事です。dotsに調査や下書きを任せても、提案内容の妥当性や対外的な約束は担当者が確認する運用が必要です。
OpenAIは、接続するアプリの選択、操作に関するルール、承認の仕組みを案内しています。公式の営業例でも、dotsが提案書や検証計画を更新し、未解決の懸念を示した後、顧客との対話と約束の承認は営業担当者と技術担当者が担います。設定や承認の条件は実際の環境で確認してください。出典:OpenAI公式発表
営業でdotsに任せられる仕事
「何でも任せられる」と考えると、かえって依頼が曖昧になります。営業では、既存の情報を基に確認可能な成果物を作る仕事から始めると、役割を決めやすくなります。
- 顧客要件と過去の取引情報を整理する
- 製品資料と照合して確認事項を洗い出す
- 提案書と検証計画の更新案を作る
- 商談前に未解決の論点を知らせる
以下はOpenAIが示した営業責任者の利用例を、営業現場の作業単位に分けたものです。自社で同じ結果が得られることを保証する事例ではありません。
| 仕事 | 渡す情報の例 | 受け取って確認するもの |
|---|---|---|
| 顧客要件の整理 | 商談メモ、追加要件、過去のやり取り | 要件一覧と変更点。原文と照らして抜けや誤読を確認する |
| 製品資料との照合 | 最新の製品資料、仕様書、社内FAQ | 対応できる点と未確認の点。仕様の最新版と担当者への確認が必要 |
| 提案書の更新 | 現行の提案書、顧客要件、検証結果 | 修正案と変更理由。価格や提供範囲の表現は承認を受ける |
| 商談前の論点整理 | 要件、検証計画、保留事項 | 質問案と懸念点。顧客への説明順序は担当者が決める |
顧客要件と過去の取引情報を整理する
まず任せやすいのは、複数の資料に散らばる要件を一つの一覧にする仕事です。商談メモ、顧客からの追加要望、過去の提案内容を照合し、「新たに加わった条件」「前回から変わった条件」「資料だけでは判断できない条件」に分けるよう依頼できます。
出力は必ず元資料と突き合わせます。特に、発言した人、決定事項か検討事項か、いつ時点の情報かは営業上の意味が変わるためです。資料が接続先にない場合は、適切な権限で共有するか、利用可能な範囲の資料に仕事を絞ります。
製品資料と照合して確認事項を洗い出す
要件を整理できたら、製品資料と比べて未確認の点を探します。例えば、顧客が求める連携方式について資料に説明が見当たらなければ、「対応不可」と決めつけるのではなく、技術担当者への確認事項として分けます。
OpenAIの営業例では、顧客要件と取引履歴を製品資料に照らし、追加の検証が必要な点を探しています。営業担当者は、dotsが示した結論だけでなく、その根拠となる資料と更新日を確認してから社内へ回すとよいでしょう。
提案書と検証計画の更新案を作る
顧客要件や検証結果が変わるたびに、提案書の該当箇所を探して書き直すのは手間がかかります。dotsには「変更された要件に関係する箇所を挙げ、修正案と変更理由を示す」と依頼できます。技術検証が必要なら、検証計画の更新案も併せて出してもらう方法があります。
ここでの成果物は、顧客へそのまま出す完成版ではなく、担当者がレビューする下書きです。価格、納期、対応範囲、技術的な実現可能性など、約束につながる表現は営業責任者や専門担当者が確かめます。
商談前に未解決の論点を知らせる
提案書が整っていても、要件の解釈や検証結果に未解決の点が残ることがあります。dotsに「次回商談までに社内で確認する点」と「顧客に質問する点」を分けて示すよう頼めば、準備の抜けを見つけやすくなります。
重要なのは、論点の優先順位を担当者が決めることです。例えば技術検証の結果待ちなら、商談での約束を先に作らず、回答できる時期と担当者を社内で確認します。dotsの出力は判断材料として扱います。
営業業務にdotsを導入する手順
初日から営業活動全体を任せようとすると、必要な資料と承認者を決めにくくなります。最初の対象を一つに絞り、次の順で試すと運用上の課題が見えます。
- 最初に任せる業務を一つ決める
- 参照させる資料とアプリの権限を設定する
- 成果物と承認が必要な操作を指定する
- 試行結果を確認して指示を調整する
最初に任せる業務を一つ決める
最初の候補は「次回商談の論点整理」です。入力する資料が限られ、出力も一覧で確認できます。成果物を「追加要件」「未確認事項」「顧客への質問案」の三つに指定すると、必要な情報が分かれます。
以下は試行用の依頼文です。実際の顧客情報を使う前に、社内の取り扱いルールに合わせてください。
次回商談の準備を手伝ってください。共有した商談メモと製品資料だけを参照し、追加要件、資料で確認できる事項、社内確認が必要な事項、顧客への質問案を分けてください。各項目に根拠となる資料名を付けてください。顧客への連絡や資料の送信は行わず、確認用の案を提示してください。
参照させる資料とアプリの権限を設定する
dotsが使える情報は、接続したアプリと与えた権限に左右されます。まず、今回の仕事に必要な商談メモと製品資料を特定し、古い版や無関係な顧客情報を混ぜないようにします。権限を広げる前に、成果物に必要な情報が揃うかを確認しましょう。
OpenAIの案内では、dotsにアクセスさせるアプリをユーザーが選び、権限を管理できます。一方、接続先にあるすべてのデータが自動的に適切な作業対象になるわけではありません。自社の情報管理担当者と、利用する資料・共有範囲・保持すべき記録を確認してください。出典:OpenAI公式発表
成果物と承認が必要な操作を指定する
依頼文には「何を作るか」だけでなく、「何を実行してよいか」を書きます。最初は、顧客へのメール送信や共有資料の更新を行わず、下書きだけを出す設定が確認しやすいでしょう。提案内容の承認者も先に決めます。
OpenAIは操作ごとのルールや承認の仕組みを設けていますが、細かな挙動は設定や操作の種類によって異なります。承認が必要な操作を想定どおり止められるか、試行時に実際の画面で確かめることが大切です。出典:OpenAIヘルプ
試行結果を確認して指示を調整する
出力を受け取ったら、正確さだけでなく、確認に必要な情報が揃っているかを見ます。「根拠の資料名がない」「確定事項と推測が混ざる」「古い仕様を参照した」といった点を記録し、次の依頼文や参照資料を直します。
一度の試行で評価するなら、「担当者が原文に戻って確認できるか」を基準にすると具体的です。成果物の良し悪しを判断できるまでは、対外的な作業へ範囲を広げないほうが管理しやすくなります。
顧客情報を扱う前に決めたい運用ルール
営業資料には顧客情報や未公開の条件が含まれます。業務を始める前に、アクセス、承認、根拠確認の責任者を決めておきましょう。
- 顧客データへのアクセス範囲
- 対外送信と提案内容の承認者
- 出力の根拠と更新日の確認方法
顧客データへのアクセス範囲
「営業資料をすべて見せる」前提にせず、対象案件と作業に必要な資料を選びます。接続するアプリ、対象のフォルダー、利用するアカウントを把握したうえで、社内の情報管理ルールに照らしてください。
OpenAIの公式発表では、dotsが利用するアプリを選択し、権限を管理できるとしています。ただし、それだけで各社の契約条件や情報管理基準を満たすと判断できるわけではありません。機密情報の扱いは自社の責任者に確認する必要があります。出典:OpenAI公式発表
対外送信と提案内容の承認者
メールの送信、顧客との日程調整、提案書の共有は、社外へ影響が出る操作です。dotsに下書きを作らせる場合でも、送信や共有を誰が承認するかを決めておきます。
内容面では、価格、納期、契約条件、導入可能な機能などを重点的に確認します。技術的な実現可能性は担当エンジニア、商業条件は権限のある営業責任者など、社内の役割分担に従って判断しましょう。AIの提案をそのまま顧客への確約にしないことが重要です。
出力の根拠と更新日の確認方法
営業で困るのは、もっともらしい提案が古い資料に基づいている場合です。dotsへの依頼時に、使用した資料名、該当箇所、資料の日付を成果物に含めるよう指定します。根拠が示せない記述は、確認事項として残します。
特に製品仕様と顧客要件は更新されます。商談前のレビューでは「今も有効か」を人が確認し、必要なら製品担当者へ問い合わせます。これにより、dotsの出力を確認可能な作業成果として扱えます。
dotsの利用条件とよくある質問
使い方を考えても、自社で利用できるか分からなければ導入計画は立てられません。ここでは、提供状況と営業チームでよく出る疑問を整理します。対象プランや機能は変わり得るため、利用時点の公式案内も確認してください。
利用できるプランと提供状況は?
2026年10月12日時点で、OpenAIはdotsをPro、Business Premium、Enterprise向けに段階的に提供すると案内しています。Proは対象地域に条件があり、Business Premiumも対応地域での提供です。Enterpriseでは管理者が有効化するベータとして案内されています。対象プランでも、アカウントへの提供まで時間がかかる場合があります。出典:OpenAIヘルプ
利用可否は、自社の契約プランと管理者設定を確認するのが確実です。料金や利用上限は変更される可能性があるため、本記事では固定的な費用として扱いません。
SlackやTeamsから依頼できる?
OpenAIは、ChatGPTのほかSlackとTeamsからdotsとやり取りできると案内しています。ただし、利用には対象の接続設定が必要です。営業チームで使う場合は、誰がどのチャネルから依頼するか、顧客情報を含むメッセージをどこまで共有するかも決めましょう。出典:OpenAI公式発表
営業チーム全体で使える?
OpenAIが現在案内している個人のdotは、ユーザー本人の仕事を支援するものです。組織内で専用の役割を持つ「specialist dots」も発表されていますが、公式発表では企業向けの限定的な試験として説明されています。営業部門に一つの共通エージェントを置けると決めつけず、まず契約プランと管理者設定を確認してください。出典:OpenAI公式発表
SFA・CRMと連携できる?
個別のSFA・CRMとの連携可否は、製品名と利用環境ごとに確認が必要です。OpenAIはdotsが接続したアプリを利用できると説明していますが、それだけで自社のSFA・CRMに接続できるとは言えません。OpenAIの公式発表を参照しつつ、導入前に対象サービスの接続方法、利用できる操作、アクセス権限を管理画面または公式資料で確認しましょう。
まとめ
営業でdotsを使うなら、まずは顧客要件の整理、製品資料との照合、提案書の更新案、商談前の論点整理など、人が根拠を確認できる仕事から始めるのが現実的です。OpenAIの営業例も、dotsが準備を進め、顧客との対話や約束の承認は担当者が担う流れを示しています。
最初の一歩として、次回商談に必要な資料を限定し、「未確認事項と質問案を出す」仕事を一件試してみてください。出力の根拠と承認範囲を確かめれば、自社の営業にどこまで役立てられるか判断しやすくなります。


